after story〜東北地方編〜

私がまだ小さかった頃、戦争でお父さんとお母さんは死んでしまった。

勿論、とても悲しかったけれどそういう子供は私だけではなかったし、それからは生きることに必死だった。

自然と私みたいな身寄りの無い子供が一箇所に集まって、皆で毎日助け合って生きてきた。

そして戦争が終わった時、私たちは優しい顔をしたおじさんに引き取られることになった。

ようやく平和な日常に戻れる…そう思っていた。

けれど、それからが本当につらい日々の始まりだった。

良い人だと思っていたおじさんは私たちを奴隷のように扱い、ひどいこともいっぱいされた。

沢山いた仲間たちも一人ずつ減っていって…それでも私たちには何もできなかった。

もう、このまま死んでいくんだと…思っていた。


まるで物語の世界から出てきたような…私たちのヒーローが現れたのは、その時のことだった。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

ピピピピピピピピ…

ユキエ「………。…朝…かぁ…」
ユキエ「…久しぶりにあの頃の夢を見ちゃったな…」


〜ネオ北海道・孤児院『コタン』〜

ユキエ「ふぁ…おはよ…」
サク「おはよう、ユキエ。今日はいつもより遅いわね」

サク姉さんはこの孤児院で一番年上の女の人だ。
あの時、親を失った私たちをまとめてくれたのもサク姉さんだ。私たちにとっての命の恩人…。
この孤児院でも皆の世話をしてくれていて、勉強も教えてくれるから学校の先生みたいなところもある。
ただ、あのおじさんに酷いことをされてから…自分より年上の男の人に対しての恐怖症を覚えたらしい。
カムイは特別だけど、サク姉さんが自分より年上の男の人に対して上手に喋れないのを私は知っている。
…でも、最近はそれもだんだん良くなってきた。いつかサク姉さんも幸せになれるといいと思う。

ユキエ「…カムイは…?」
サク「今日も東北の人たちと朝から作戦会議。あの…なんだっけ?…大きくて怖いガンダム…」
ラメトク「デーモンガンダムだろ?」
サク「そうそう、デーモンガンダム!…それの研究施設を調査するんだってさ」
ラメトク「俺も行きたかったけどサク姉さんが絶対駄目だって言うんだ。ユキエ姉さんから説得してよ!」

ラメトクは私より一個下…この孤児院では一番年上の男の子だ。
カムイが私たちを助けてくれる前はずっとラメトクが私たちを守ってくれていた。とても頼りになる弟…。
最近はカムイに戦い方を教えて貰っていて、自分もガンダムファイターになるんだ…ってずっと言っている。
でも私はまだ早いんじゃないかな…と思っている。確かに他の県のファイターはラメトクと同じ位の子もいたけど…。
今日も朝早くから素振りをしていたんだろう。今はタオルを首にかけて牛乳を片手に持っている…。

ユキエ「ラメトクにはまだ早いよ。私もそう思う…」
ラメトク「ええー!?」
サク「ほら、ユキエもそう言ってるじゃない!さぁさぁ、皆もそろそろ起きてくる頃だし朝ご飯にしましょう!」
ラメトク「はーい! …くっそー!もっともっと修行しないとな!」

〜ネオ青森・津軽〜

ヒバ(ネブタ)「ネオ北海道の網走…。旧時代の監獄が残る場所…その監獄は現在、幽霊騒ぎで廃墟化…」
ミナミ(めんこい)「そして知らない内にデーモンガンダムの研究施設ですか…。あまり趣味がいいとは言えませんね」
キバ(ナマハゲ)「だが、俺らに目をつけられたからにゃもう終わりだ!二度と再建できないようブッ潰してやる!!」
ケヤキ(ビャッコ)「ええ!あんなものをこれ以上野放しにしておくわけにはいきません!攻め入りましょう!!」
マサジロウ(ダテ)「待てい、迂闊に攻め入るは愚の骨頂じゃ。敵がどのような相手か忘れたわけではあるまい?」
カムイ(シャクシャイン)「……自己進化…。…情報が少ない現状では、全滅の可能性も少なくない……」
ベニバナ(チェリー)「だ、だけどそれなら逆に早めに叩いておかないと後々取り返しのつかないことになるんじゃ…」
ミナミ「リスクの問題です。いざとなれば他の地方に応援を呼ぶという手もありますからね」
キバ「チッ、そういうのは嫌だがしょうがねえな。引き続き調査を続けるか…」
カムイ「……すまない…、…ネオ北海道の問題ならば俺が解決すべきなのだが……」
ヒバ「何を水臭いこと言ってるべや。相手はあのデーモンガンダム、一人じゃどうにもいかねぇべ…」
ミナミ「それに、貴方に死なれてはユキエちゃんが悲しんでしまいますからね」
カムイ「…ああ…気をつける…」
キバ「(こいつ…ミナミの言ってる意味、分かってるのか…?)」

ケヤキ「………」
ベニバナ「うーん…」
マサジロウ「不服そうじゃな…ケヤキ、ベニバナよ…」
ケヤキ「い、いえ…そういうわけでは…」
ベニバナ「…それが決定なら…従いますけど…」
マサジロウ「ふむ、それならいいんじゃがの。くれぐれも早まった真似をするではないぞ」
ケヤキ「はい…」
ベニバナ「わかりました…」

〜会議終了後〜

ケヤキ「ベニバナ、今晩…少し付き合ってくれないか?」
ベニバナ「ええ!?な、何に!?」
ケヤキ「…別に変なことじゃないんだけど…」
ベニバナ「あ、そ…そう…。ふぅ、ちょっとビックリしちゃった…」
ケヤキ「(こいつ…ナダレさんと仲良くし始めてからちょっとおかしくなったな…)」
ベニバナ「で…何をするの? …まさかとは思うけど…」
ケヤキ「ああ、俺たちだけでデーモンガンダムを破壊する!カムイさんたちは慎重になりすぎだ!」
ベニバナ「だっ、駄目だよ!僕たち二人だけでできるわけないじゃないか!」
ケヤキ「何を弱気な…。いいか、俺たちはまだ年少ってだけで実力的には他のメンバーに引けは取っていない」
ベニバナ「そ…そうかなあ…?」
ケヤキ「そうだ!お前だって此間、あのカムイさんと接戦を演じたじゃないか!弱いはずがないんだ!」
ベニバナ「確かにそうだけど…。…でも、相手はあのデーモンガンダムだよ?」
ケヤキ「そのデーモンガンダムも、あのガンダムサンドヒルに破られた。過大評価しすぎだよ」
ベニバナ「だ、だけど…」
ケヤキ「俺とお前ならできる!ここで手柄を上げて、カムイさんや師匠に認めてもらうんだ!」
ベニバナ「はぁ…、…わかったよ。ケヤキは一度言い出したら聞かないからね…」
ケヤキ「悪いな…無理矢理付き合わせちゃって…」
ベニバナ「…実は僕も一理あると思っていたんだ…。じゃ、また今晩ね!」
ケヤキ「ああ!ガンダムのメンテは念入りにしとけよ!」
ベニバナ「わかってるよ。ケヤキもね!」

ケヤキ「(やれる…やってみせる…! 俺だって東北の強豪の一員なんだ!)」

ベニバナ「(ここで認めてもらえば…もう誰も僕たちを子供扱いしなくなるハズ…!)」


〜夜…ネオ北海道・網走監獄跡地〜

ガコン…

ベニバナ「ここは搬入口…? 広いね、MFが自由に動ける…」
ケヤキ「そうみたいだな。今や人っ子一人いないか…」
ベニバナ「ついさっきまで動いてたみたいな作業用車が転がってるのも不気味だよね…」
ケヤキ「ああ…幽霊騒ぎがあってもおかしくない場所だ…」
ベニバナ「うう…で、でもやらなきゃ…ここまで来て引き返したんじゃ男がすたるよ」
ケヤキ「ははっ、まさかベニバナがその台詞を言うとはな。似合わないぞ」
ベニバナ「酷いよ!僕だって男なんだから!」
ケヤキ「ああ、わかっ…―――…っ! 今、何か動いたぞ!」
ベニバナ「デーモンガンダム!?」
ケヤキ「わからない。あのコンテナの陰に消えた…。弓を引いておいてくれ。ビャッコが仕掛ける」
ベニバナ「了解、気をつけて」
ケヤキ「わかってる。 タイガークローッ!!」

ザシュウッ!

ケヤキ「いない…? そんなバカな、さっきは確かに…」
ベニバナ「ケ、ケヤキ!そこじゃない!てんじょ… うわあッ!!」
ケヤキ「どうした、ベニバナ!! ぐああッ!!」

ボゴォッ…!

ベニバナ「こ…これは…デーモンガンダムの触手!?」
ケヤキ「どっ、どうしてこんな所に!? …まさかッ!!」
ベニバナ「既に施設と同化するぐらい巨大に進化していたの!?」
ケヤキ「の、飲み込まれ…うわああああッ!!」

ズン…

〜ネオ北海道・孤児院『コタン』〜

カムイ「…今、帰った…」
サク「おかえり、カムイ。遅かったね。またリュウタニ先生のトコで稽古?」
カムイ「…ああ…。………あと、少し面倒なことになった…。…しばらく留守にするかも知れん…」
ラメトク「ええー!?俺の剣術稽古はどうなるんだよー!」
カムイ「……すまん……」
サク「はいはい、カムイも大変なんだから邪魔しないの。カムイ、留守中は任せておいて」
カムイ「……助かる……」

ユキエ「カムイ…また戦いにいくの…?」
カムイ「…ああ、放っておけば…皆が危険に晒される…」
ユキエ「ガンダムファイトが終わったら、また皆で過ごせると思ってたのに…」
カムイ「……もう少し待っていてくれ……」
ユキエ「もう少しって…いつのことなの?」
カムイ「……………」
ユキエ「カムイ、うそつき!」

タッ

カムイ「…ユキエ…」
サク「相変わらず不器用な男ね…。もっと上手く言えないの?」
カムイ「……こればかりは…どうしようも……」
サク「ユキエは後で私が慰めておくわ。カムイは早くお風呂に入ってて。なんだか汗臭いわよ?」
カムイ「……迷惑をかける……」
サク「言いっこなしよ。私たちのヒーローさん」
カムイ「…ヒーロー…か…。…俺はそんな大したものでは…」
サク「私たちにとってはそうなの。さ!お風呂に入った入った!チビたちも入れてあげてね!」


〜ユキエの部屋〜

ユキエ「(カムイを困らせてしまった…。あんなことを言うつもりじゃなかったのに…)」
ユキエ「(でも、このまま戦い続けていると…カムイが遠くに行っちゃうような気がして…)」
ユキエ「(やっぱりカムイには戦ってほしくないよ…。また皆で、仲良く平和に暮らしたい…)」
ユキエ「…あの頃には…戻れないの…?」

コンコン…

ユキエ「サク姉さん?」

シンッ…

ユキエ「…サク姉さんじゃないの?」

ガチャ…

ユキエ「誰もいない…。イタズラかな…?」
???「…ごめんなさい」 ドゴォッ
ユキエ「ッ…!!」 パタッ…
???「よし、急いで運ぶぞ。早くしろ!」
???「わかってるよ!あっちの窓だ!」

ダダダダダ…


サク「ユキエ、入るよ?」 コンコン…

ガチャッ…

サク「ユキエ…?」


ケヤキ「…驚くほど簡単にいったな…」
ベニバナ「そうだね。カムイさんと戦わなくちゃならないと思ってたのに…」
ケヤキ「あ〜あ、少し残念だな。あの無表情が驚くところを見たかった!」
ベニバナ「駄目だよ、ケヤキ。早くユキエちゃんをデーモンガンダムの所に運ばないと…」
ケヤキ「わかってるよ!…まったく、何でデーモンガンダムはこんな女の子をコアにしたがっているんだ?」
ベニバナ「知らないよ。ただ、僕たちは指令に従うまでだ…」
ケヤキ「ふふふ…そうだよなァ…」

ボウッ

ケヤキ「こんな素晴らしい力を手に入れたんだ!お礼にデーモンガンダムには忠義を尽くさないとさァ!」
ベニバナ「あはは…あははは!そうだよね!早くこの力を皆に見せてあげようよ!」
ケヤキ「ふふふ…まぁ、そう焦るなよ。デーモンガンダムがコイツをコアにして、マスターデーモンになってからさ!」
ベニバナ「楽しみだなぁ!すっごく楽しみ!!あはははははは!!」

ユキエ「(…カム…イ…、…助け…て…)」


〜翌日…ネオ北海道・網走監獄跡地周辺〜

キバ「何ィ!?ユキエちゃんが家出だとぉ!?」
カムイ「……ああ…、…皆で探しているんだが…見つからん……」
キバ「お前のその朴念仁っぷりに嫌気が差しちまったんじゃねーか?」
カムイ「……そうかも知れん……」
キバ「そ、そこは言い返せよ!!冗談に決まってんだろ!!…しっかし、あのユキエちゃんがなぁ…」

ミナミ「それで、どうして貴方はここにいるんですか?」
カムイ「……どうして…とは……?」
ミナミ「ユキエちゃんを放ったらかしで何をしていると聞いているんです!」
カムイ「…デーモンガンダムは危険だ…。…調査を最優先しなければ…」
ミナミ「あんたがそったらことでどうすっぺ!!」 ガシッ
カムイ「!?」
キバ「お、おい!落ち着けよミナミ!方言!方言出てる!」
ミナミ「コホン…、…いいですか?ユキエちゃんが家出したのは十中八九貴方のせいです」
カムイ「……俺に…どうしろと……」
ミナミ「今すぐ探しに行きなさい!今日はカムイさんは欠席でいいですから!」

ヒバ「おおい、その辺にしとくべ…。確かに娘っこは心配だが、これ以上欠員されたら作戦に支障をきたすべ」
マサジロウ「そうじゃのう…まさかあの二人と連絡がつかなくなるとは…。嫌な予感がするのう…」
ヒバ「じいさん、縁起でもねぇことは言うもんじゃねぇべ。そういうことさ言ってると大抵は…」

ゴゴゴゴゴゴ… ドゴォォォッ…

ヒバ「…予感的中するもんだべ…」
ミナミ「し…施設がッ!? …まさか…これ自体がデーモンガンダム!?」
キバ「お、おい!見ろ!あの二機のガンダムは…まさか!?」

ケヤキ「やぁ、皆さん…案外早かったですね。ふふふ…完全体になるまでもう少しだったのになぁ…」
ベニバナ「あははははっ!いいじゃん、ケヤキ!僕たちだって戦いたいんだからさ!」
ミナミ「ガンダムビャッコ!ガンダムチェリー!」
キバ「やい!てめぇら何の真似だ!!子供のイタズラじゃ済まされねぇぞ!!」
ベニバナ「僕たちを子供扱いするなァッ!!」
ケヤキ「いつまで大人ぶっているつもりですか?すぐに叩き潰してあげますよ!!」

ボウッ

ヒバ「ありゃあ…普通じゃねぇべな…」
カムイ「……まさか……」
マサジロウ「やれやれ、釘を刺しておいたのに早まってしまったようじゃな…。あの馬鹿弟子が…」
ミナミ「彼らはDG細胞に洗脳されている…ということですね?」
キバ「クソッ!こいつは厄介なことになっちまったぜ!!」
カムイ「……しかし、あの口ぶりでは相手をしている時間はなさそうだ…。…どうする…?」
ヒバ「不本意だが戦力を分散するしかねぇべ…。―――…来るぞ!!」

ケヤキ「さぁ、覚悟しろよ!!全員あの世に送ってやる!!」
マサジロウ「弟子の不始末はワシの責任じゃ。ここはワシに任せてもらおうかの…」
カムイ「……すみません、師匠……」
マサジロウ「何、言うでない。さて…過ちを犯した弟子にはお灸を据えねばならんか…」
ケヤキ「俺はッ!今日こそあんたを超えて一人前になるッ!!」

ベニバナ「戦力を分散する気?無駄だよ!あんたたちは全員ここで死ぬんだ!!」
キバ「ベニバナ!てめぇ寝ボケたこと言ってんじゃねぇぞ!! …カムイ、ここは俺に任せろ!!」
カムイ「……頼んだ、キバ……」
ベニバナ「なんだ…キバさんが相手なの?不足だよ!五秒でケリがついちゃうじゃない!」
キバ「(ピキッ…)…おいおい、ベニバナちゃんよォ…誰に向かって口利いてんのか…分かってんのか?」

ミナミ「あの二人なら大丈夫でしょうが…さて、問題はこちらですね…」

デーモンガンダム「 グ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ … 」

ヒバ「やれやれ、ここまでデカくなっちまってりゃあ生半可な攻撃ではビクともしねぇべ。ここは一気に…」
カムイ「…待ってくれ、コアブロックに誰かいる…。……あれは…まさか……!」

ユキエ「……………」

カムイ「ユキエ!!」
ヒバ「なっ…こりゃあどういうことだべ!?なんであの娘っこが…!」
ミナミ「取り込まれている!? …クッ、これでは迂闊に攻撃できない…!」

デーモンガンダム「 ゴ ガ ァ ァ ァ ァ ァ … 」

ゴゴゴゴゴゴ… ドゴォォォォッ!

ヒバ「ぐっ!それでも敵さんは容赦なく攻撃してくるべや! ―――…致し方ないが…」
ミナミ「い、いけません!必ず何か助ける方法はあるはずです!!」
ヒバ「しかし…このまま野放しにしていれば今度はもっと多くの人間が危険に晒されるべ!」
ミナミ「それは最後の手段です!カムイさんも…―――…カムイさん…?」
ヒバ「あ、あいつめ!たった一機であんなところに!」

カムイ「ユキエ、必ず助ける…! 待っていろ…!」

ユキエ「……………」
デーモンガンダム「 ゴ ォ ォ ォ ォ ォ … 」

ズガァッ!!

カムイ「ぐおおッ!?…っく…邪魔だ!そこを退けぇええええッ!!」
 

〜監獄跡地・正門〜

ケヤキ「スプラッシュイワナシロォッ!!」
マサジロウ「ふんっ!」

キンッ! キンッ!

マサジロウ「どうした、踏み込みが甘いぞ?」
ケヤキ「おのれ…俺を馬鹿にする気か!!何故、刀を抜かない!!」
マサジロウ「今のお主には鞘だけで十分じゃ。ほれ、打ってこんかい」
ケヤキ「くそぉっ!!タイガークローッ!!」

キンッ!

マサジロウ「他愛ない…。ケヤキよ、随分と弱くなったものじゃな…」
ケヤキ「何だとッ!?身体能力も、機体性能も、遥かに上昇しているッ!俺が弱くなっているわけがない!」
マサジロウ「まだ分からんか?馬鹿弟子が…」
ケヤキ「うおおおおおおッ!!」
マサジロウ「弱くなったのはな…」

ガキィィィンッ…!

マサジロウ「心じゃよッ!!」
ケヤキ「―――ッ! (…タイガークローが…全て折られ…!)」
マサジロウ「目を覚まさんか、馬鹿者が!お前の真の強さは身体能力や機体性能ではないじゃろう!」
ケヤキ「!! ―――し…師匠…、…俺は…」
マサジロウ「思い出したか?ワシの言葉を」
ケヤキ「クッ!も…申し訳…ありませんでしたッ!―――…かくなる上は死んでつぐな…」

ズン…

ケヤキ「あ……」 ガクッ…
マサジロウ「やれやれ、不器用な男じゃの…。お主はワシが死なせんよ…大事な弟子なんじゃからな…」
 

〜監獄跡地・格納庫〜

ビシュッ! バシュッ!

キバ「ちぃいッ!!」
ベニバナ「あはははは!どうしたんだい、さっきの威勢は!逃げてばっかりじゃないか!」
キバ「野郎…好き勝手言いやがって…!」
ベニバナ「ほらほら!悔しがってる暇はないんじゃない? そこぉッ!!」
キバ「うおおッ!!」

キバ「ふぅ…コンテナがあって助かったぜ。ここで態勢を整えて…」
ベニバナ「あはははは!残念、助かってないよ!そのコンテナ、何が入ってると思う?」
キバ「ッ!!まさか…武器コンテナか!?」
ベニバナ「さようなら、キバさん。あなたのことは嫌いじゃなかった」

バシュウッ! …ドォォォォォンッ!!

ベニバナ「あははは!あはははははは!!派手に吹き飛んだぁ!!木っ端微塵だね!!」
ベニバナ「さぁ〜て、と…次はミナミさんでも殺っちゃおうかなぁ…。あは…あははは…」
ベニバナ「……な、なんだろう…ゾクゾクする…。…この悪寒…覚えがあるような……」

キバ「ビンゴだぜ、ベニバナちゃんよォ!!」 ゴウッ…!

ベニバナ「ナ…ナマハゲガンダム!?あの爆発で吹き飛んでいないなんて…!!」
キバ「てめぇとは気合の入り方がぁッ…!」 ガシッ
ベニバナ「あぐっ…! (あ、頭を掴まれ…―――…まずい…!)」
キバ「違うんだよッ、オラァ!!」

ズガァァンッ!!

ベニバナ「ッッッッ〜〜〜〜!!!」
キバ「へっ、いい音が響いたな…。今の衝撃でちったぁ目が覚めたか…?」
ベニバナ「―――――」
キバ「…逆だったか。…まぁ、永眠じゃねぇ………よな?」


〜監獄跡地・最深部〜

ドゴォォッ!!

カムイ「ぐううッ! …くっ…何としてもコアブロックに…」

ヒバ「や、やけにコアブロックを庇う動きだべ…。まるで全てを拒んでいるかのような…」
ミナミ「拒む…?―――まさか!!」

カムイ「ユキエ!俺だ!!目を覚ませッ!!」
ユキエ「……………」
デーモンガンダム「 ゴ ォ ォ ォ ォ ォ … 」

ズガァッ!!

カムイ「がはぁッ…! クソ…まだ持ってくれ、シャクシャインガンダム…!」
ミナミ「カムイさん、がむしゃらに攻めてもラチが空きません!一度引いてください!」
カムイ「そういうわけにはいかん!このままでは…ユキエが完全に取り込まれてしまう!」
ミナミ「分からないんですか!?そのユキエちゃんが貴方を拒んでいるんです!!」
カムイ「な…何ッ…?」
ミナミ「…よく思い返してください、彼女が貴方を拒む理由を。彼女の心を閉ざしてしまった理由を…」
カムイ「ユキエが…心を閉ざした理由だと…?」

ユキエ『カムイ…また戦いにいくの…?』
ユキエ『ガンダムファイトが終わったら、また皆で過ごせると思ってたのに…』
ユキエ『カムイ、うそつき!』
ユキエ『(でも、このまま戦い続けていると…カムイが遠くに行っちゃうような気がして…)』

カムイ「……そうか…ユキエ、お前は……」
ユキエ「(カムイ………)」

カムイ「…エペタム、起動…」

ヴンッ…!

ヒバ「エペタムを!?カムイ、一体何をする気だ!?」
カムイ「……エペタムで…コアブロックを引き抜く……」
ヒバ「無茶を言うんじゃねぇべ!完全に制御できないエペタムにそんな精密動作ができるべや!?」
カムイ「…無理も無茶も承知の上だ。…だが、これしかない…!」
ヒバ「そんな危険な賭けをさせるわけにはいかねぇべ!もし、それでもする気ならば俺が直接コアをぶち抜く!」
ミナミ「待ってください、ヒバさん。私は…カムイさんがエペタムを完全制御できると確信しています」
ヒバ「ミ、ミナミまで何を言うべや!」
ミナミ「ここは彼を信じてください…。いえ、彼らを…ですか…」
ヒバ「くっ…失敗すれば躊躇い無く俺は引き金を引くぞ!」
カムイ「……すまない、ヒバさん……」
ミナミ「(そう…今の彼ならばエペタムを完全に制御できる…。あの東北大会決勝の時のように…!)」

カムイ「聞け、ユキエ…俺はこれからも戦い続けるだろう…」
ユキエ「……………」
カムイ「その度にお前には辛い思いをさせてしまうかも知れない…だが、ひとつだけ約束しよう…」
ユキエ「…………」
カムイ「“俺は必ずお前の傍へと帰る”…。…誓おう…絶対にこの約束は破らない…!」
ユキエ「………」

カムイ「このお守りを媒介に………今は天地自然の神々ではない…ユキエ、俺に力を貸してくれ!!」

カムイ「エペタァァァァァムッ!!!」

カァァァァッ…!

カムイ「……デーモンガンダム…、…返して貰ったぞ……」
ユキエ「カムイ…! カムイーーーッ!!」
 

デーモンガンダム「 ゴ ガ ァ ァ ァ ァ ァ … 」

カムイ「むっ…! …コアブロックを引き抜いても…まだ動けるのか…!」
ユキエ「カムイ、危ない!」
カムイ「…心配は要らん…、…頼もしい味方が居る…」

ヒバ「リミッターカット!『三大祭』モード移行!全武装安全装置解除!ターゲットロック!」
ミナミ「アーマー強制排除!NEPE起動!イーハトーヴフィールド展開!めんこいガンダム、フルドライヴ!」

ヒバ「遠慮はいらんべ!全弾持ってけ!B(ブルー)・F(フォレスト)・C(カーニバル)!!」
ミナミ「その巨体に風穴を開けます!ロックハンドスマァァァッシュ!!」

ズガァァァァァァンッ!!!

デーモンガンダム「 グ ォ オ ア ァ ァ ァ … !! 」

ヒバ「これでも焼き尽くせねぇべか…。カムイ、最後はお前に譲るべ!!」
ミナミ「ユキエちゃんも助けたことですし、思い残すことなくやってください!!」
カムイ「……了解…! …いくぞ、シャクシャインガンダム……!」

デーモンガンダム「 ガ ァ ァ ァ ァ … !! 」

カムイ「…荒ぶる魂よ…氷の棺に眠れ…! 唸れ、青き光の指…!」
カムイ「コンル・フィンガァァァァァーーーーーッ!!!!」

デーモンガンダム「 グ ゴ ォ ォ ォ ォ ォ … !!!!!」

バシュウウウ…

カムイ「……凍葬…完了……」


〜そして…〜

キト(メディカル)「オペ終了…二人に植えつけられていたDG細胞は綺麗サッパリ除去いたしましたよ」
ミナミ「わざわざ富山から出向いてくれて…本当にありがとうございます、キト先生」
キト「ハハハ…彼らをあのまま失うわけにはいきません。それに、他ならぬミナミさんのお願いですからね」
ミナミ「そんな…私のためにだなんて…」
ヒバ「正直…やってられねぇべ…」

ケヤキ「申し訳ありません、師匠。俺が軽率な行動をとってしまったばっかりに…!」
マサジロウ「よい…終わったことじゃ。それに、今回のことで改めて分かったじゃろう?本当の強さというものが…」
ケヤキ「はい!俺、もっともっと精進して真の強さをいずれ手に入れて見せます!その時は、師匠…」
マサジロウ「うむ…その時はワシも刀を抜かせて貰うとするかの…。ほっほっほっ…」

キバ「よお!目が覚めてよかったな!ベニバナ!」
ベニバナ「ひぃい!キ…キバさん!ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!許してくださぁい!」
キバ「な、なんだよ…そんなにビビるこたぁねぇだろ…」
ベニバナ「もうナマハゲガンダムとは戦いません!うわぁぁぁぁん!」

ユキエ「カムイ…ごめんね…。私のせいで…」
カムイ「……ユキエは悪くない…。…俺こそ、お前の気持ちを分かってやれず…すまなかった……」
ユキエ「(ドキッ…)わ、私の気持ち…? あ…あの時言った必ず私の傍に帰るって言葉は…その…そういう―――」
カムイ「……お前たちは…親を失っているんだからな……」
ユキエ「え?」
カムイ「…俺では親として不足もあるかも知れん…。しかし、お前たちの親代わりになるため努力は惜しまないつもりだ…」
ユキエ「あの…カムイ…?」
カムイ「……これからも俺はずっと一緒にいるぞ、ユキエ……」
ユキエ「〜〜〜〜〜っ!」

カムイ「ど、どうした?どこへいく、ユキエ!」
ミナミ「……カムイさん…本気でやっているんですか…?」
ヒバ「持ち上げてから見事な落としっぷりだべ…。あれはショックだべ…」
キバ「あーりゃりゃ…あれじゃあまたデーモンガンダムのコアになっちまうかもなぁ…。やれやれだぜ…」

カムイ「…わ、わからん…。なぜだ…? …うーん…」

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