before story 〜ヒグラシガンダム〜

都道府県対抗ガンダムファイト開催一年前


サキ「父上……無事代表選抜に合格し、本日正式にネオ岐阜代表の命が下りましたことを、ここに報告いたします……」
テンザン「うむ……。サキよ……よくやった」
サキ「はい、ありがとうございます」
テンザン「斉藤家を担う者として、これからさらに精進せよ……!」
サキ「はっ!」
テンザン「…………くくく!」
サキ「……ふっ、くく」
テンザン「がっはっはっはっはっ!!」
サキ「あははっ!」
テンザン「いやぁ〜、よく頑張ったな!サキ!お父さんうれしいぞ!」
サキ「もう、父上!誰も見ていないんだから頭首状態はやめてよね!」
テンザン「ちょっとくらいいいじゃないか!晴れてネオ岐阜の代表になれたんだからな!」
サキ「ふふっ」
テンザン「これでお前も立派に跡を継げるんだな……」
サキ「……父上?」
テンザン「ま、わしはまだ余裕で現役だがなwwwwww」
サキ「もう!驚かさないでよ!」
テンザン「がっはっはっ!!」
サキ「あ、父上……あの……」
テンザン「……ふむ、お前の言いたいことは解る……」
サキ「私のガンダムってどういう機体?……やっぱり近接格闘機なの?」
テンザン「お前の剣術はなかなかのモノであるのは誰もが解っておる……が……、」
サキ「……」
テンザン「…………場所を移そう……。サキ、岐阜城に行くぞ」
サキ「……はい(……父上、様子が……)」

〜ヒグラシガンダム、スーパーカミオカンデの秘密〜
 

〜岐阜城〜

サキ「すごい……城の下がこんなになってるなんて……!」
テンザン「ここはネオ岐阜の技術開発・機体開発本部だからな。ネオ岐阜屈指の機械設備を備えているんだ」
サキ「なんか……たくさんあるわね……。……試作機?」
テンザン「あれらは……県間戦争時代に用いられた機体だ……。戦争の……名残と言ったとこだな」
サキ「…………これがすべて戦争に使われていた……」
テンザン「人の世の歴史は何も華々しいものばかりではない……。その裏は黒き暗躍によって固められている……我らが祖・斉藤道三がかつて、一国の主になるために犯した数々の業のようにな……」
サキ「はい……」
テンザン「県間戦争は、この国のあちこちに今も癒えぬ傷をつけた……深く、深く……」
サキ「でも……それは仕方がなかったんじゃ……」
テンザン「戦争に仕方がないは無い……犯したことは事実として今生憑きまとう……。このネオ岐阜とて例外ではない……」
サキ「父上……」
テンザン「話が長くなったな……そろそろお前に託すガンダムを見せてやろう。……この奥だ」
サキ「……はい」
テンザン「点けるぞ」

カチッ!パアアア!

サキ「あ……、こ、これが私の……!」
テンザン「ネオ岐阜が総力を挙げ造り上げたモビルファイター、『ヒグラシガンダム』!」
サキ「ヒグ、ラシ……」
テンザン「蝉のよう、一時の輝きのために長い年月を堪え忍んできた……まさにネオ岐阜の象徴だ」
サキ「すごい……あの両翼、かなりの推進力がありそう……ん?なにあの……背中……大砲?」
テンザン「…………あれは高出力のビームランチャー……『スーパーカミオカンデ』そしてあの両翼は推力を生むための物ではない。ただのエネルギー供給パネルだ」
サキ「ただのパネル?……そして大砲……、まさか……!」
テンザン「そう、このヒグラシガンダムは近接格闘機ではない……長遠距離からの射撃を目的とした砲撃機だ!」
サキ「砲撃……機体……。それに私が……」
テンザン「本当は……このままお前に託すことはしたくなかった……わし等の時代の負の遺産を……」

サキ「……県間戦争……」

テンザン「……あるとき、高山市で未知の粒子『ニュートリノ』が観測された。研究によりそれが、通常に用いるあらゆるエネルギーを遙かに凌駕する熱量を持つとわかった……」
テンザン「長期に渡る開発でニュートリノ粒子を機体エネルギーに転用しようとしたが、なかなかうまくいかなかった……そこで武装に目を付け、開発を進め……完成したのが『スーパーカミオカンデ』だ……」
テンザン「我々はその時に気づけなかった……ニュートリノ粒子を武装転用する愚かさに……」

テンザン「サキ、地図から消えた村の話を知っているな……」
サキ「はい……、ネオ岐阜山中の……確か毒性のガスかなにかで……廃村に……」
テンザン「あそこは……地図上、そして実際に消滅しているんだ……跡形もなく……」
サキ「え?そんな話はまったく……!」
テンザン「県間戦争時に起こっていた内紛の舞台の一つがその山中だった。その内紛を早期に沈めるために、敵本拠地の施設だけを破壊しようとした。カミオカンデの性能テストを兼ねヒグラシガンダムを繰り出してな……」

テンザン「……そして……フルチャージしたカミオカンデで……施設だけを狙った…………だが……」

サキ「ま、まさか村ごとすべて焼き払った……!?」
テンザン「その能力に目を付けた上層部は、数々の内紛にヒグラシガンダムを駆り出した…………そして駆り出した数だけ………」

テンザン「……すまぬなサキ、お前が県選抜に出ると決まった時から上層部に近接武装の製造を掛け合ったんだが……間に合わなかった……」
サキ「いえ、父上!そんなことはないわ!戦える機体だけがあれば私は別に!」
テンザン「いや、ただ砲撃武装というそれだけの理由であるならば有無を言わせなかった……ただ、このカミオカンデの業まで……お前に背負わせるわけにはいかなかった……」
サキ「父上……」

テンザン「この地を納める者として、すべての歴史を網羅しなければならない。例えそれが血塗られたものだとしても……だが、親心か……今に至るまでそれを隠し続けてきてしまった……サキよ、すまぬ……」
サキ「ち、父上……。な、何言ってるのよ!私は実力で県選抜を勝ち抜いてきたのよ?それに父上の娘なの!すべてを受け入れる力はあるつもりよ!」
テンザン「サキ……」
サキ「戦争に関わっていないといってその事実から逃げるつもりはないわ!時期斉藤家頭首となるならばこの国のためそれくらいの業、簡単に背負ってやるんだから!」
テンザン「口で言うほど簡単ではない……だからこそわし等だけで……!」
サキ「戦争は誰のせいでもないと前に父上言ってたよね?だったらその責任を請け負う人が増えてもいいんじゃないの?同じ家系ならなおさら。だから父上……私にもこの家……この国の為に、このヒグラシガンダムで戦わせて!!」
テンザン「サキ……お前……」
サキ「それに……今の私に出来ることは大会で勝ち上がることなの……そのためにも……!」
テンザン「……ふっ、子供は親の見ぬ間に成長するとはよく言ったものだな……。サキ、大きくなったなぁ……」
サキ「父上……」
テンザン「……こんなにも頭首としての威厳があれば明日からにでも任せても大丈夫かもな」
サキ「だったらそうしてよ!父上、明日から毎日寝ていられるしね!」
テンザン「がっはっはっはっ。」
サキ「ふふっ」
テンザン「…………解った、サキ。ヒグラシガンダムをお前に託す。だが……くれぐれも無理をするなよ?すべてを背負い込む必要はないからな?」
サキ「父上……ありがとう!」
テンザン「本当に……わしの自慢の娘だよお前は!」

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